ボクらの時代 遊川和彦×内田有紀×天海祐希 ADから脚本家へ
■知り合ったきっかけ、最後から二番目の恋
遊川:僕と天海さんは「女王の教室」
天海:(内田有紀とは)「マグロ」というドラマをきっかけに
内田:きょうだい役で
遊川:姉御って呼んでますもんね(笑)
内田:ゆり姉さん
天海:ふたりで夜な夜なあったりして
内田:ご飯食べてカラオケ行って
遊川:飲んで...何か辛いことがあった?
天海:盛り上がりましょう的な。私初めてお目にかかったのは函館のホテル。世の中にこんな可愛い人がいるんだって。色々話をさせていただいてトップアイドルで凄かった時を知ってるから。過去形、変な意味じゃなくてね。なのになんでこんな普通の人なんだろうって衝撃。もっと勘違いしててもいいし、ずれててもいいし。私も宝塚にいた頃に感覚がずれてしまってて。とっても近しいものを感じた
遊川:世間知らずっぽい感じかなと
内田:二人共お父さんお母さんって呼んでもいいですかね(笑)
天海:育ててきてるからね(笑)
遊川:「最後から二番目の恋」見たときに、ほんとに良かったと思いました。よく似合う役だと(笑)内田有紀ホントにいい役だと、上手くコミュニケーションできない役だと。見事に演じた
■幼少期~
天海:しゃべらなかった。ずーっとこのままじゃないんですよ。トロかったり。食事するのもトロかったり。
遊川:僕はスターでしたもん(笑)
天海:かわいい
内田:スターっていうのは
遊川:歌って踊って芝居もできる西城秀樹みたいな
天海:ジュリーとか
遊川:ジュリーなりたかったもん(笑)
天海:幼稚園の頃、お遊戯で劇をやるじゃないですか。ゆりちゃんは声が大きくてお芝居上手ね、って言われたの。それで「ゆりちゃんお芝居上手なんだ」て思って(笑)「お芝居する人になる」
内田:めちゃくちゃ恩人ですね
天海:そうですよ。女優って言い方じゃなかった。「お芝居をする人」子供の頃テレビや映画見たりしても「ここの世界にどうやっていけるんだろう」ってずっと思ってたの。その頃は子供劇団とかスカウトされるところに行かないから
遊川:表参道とか行かないの
■宝塚
天海:行かないです。中学の先生が「あなた宝塚行ったら?」あ、宝塚って手があった!って思って、どんなに大変なところか知らないから「うわ、こんなすごい人たちがいっぱいいる」びっくりして。宝塚をすごい目指してやってきてる人たちだから
遊川:受かると思いました?
天海:図々しいから受かると思ってた。ホントに軽い気持ちで。実際入ってみてから、受かるって大変なことなんだと
遊川:ご両親は受かるって思ってたんですか?
天海:全然思わなかったし、役をつけて頂いた時も「なんであんたが?」って
遊川:心配なんですか。そっちの世界って
天海:自分たちの子だから、そんなに認めて頂ける何かがある子じゃないって。「私こんなになると思ってた?」「全然」(笑)えぇ?アンタちょっとぐらいさ。周りはすごいデキる人いっぱいいたし、綺麗な人もいたしこのままいったらまずいことになっちゃうんだろうって、嫌な予感。
遊川:周りの反感を買いそうな流れになると。自分はそんなつもりなくても
天海:「こいつ出てきそうだな」って子は杭を打たれるわけですよ。最初にコンコンコンって打たれたと思うんですけどそれを跳ね除けて出すぎてしまいまして(笑)でもすごく応援してくださった上級生の方もいっぱいいましたし、陰ながら応援してくれた同期もいましたし。
遊川:人気が出てきたら、嬉しいって思うわけでしょ
天海:躊躇しましたよ。戸惑った。
遊川:やっぱりな、お前とは違うんだよとか思わない?
天海:思わない。すごくびっくりした。高校何年生までかはごくごく普通の生活をしてた。誰も自分に注目しない生活を17歳までしてる。そこから急に激変してるからなんで私をそう見るのって、恐怖でしたね。
■デビューの頃
遊川:なりたくて入っていったの?
天海:知らない間に人気が出た感じじゃない?
内田:おんなじです。すごく怖いって私なんか何にもない、どうして
天海:でも応援して下さる方がいるから
内田:がんばるしかない
■ADから脚本家へ
遊川:僕は物を書くのは好きではない。しゃべってるほうが好き。仕方なく書いてる感じ。何か浮かんだものをパパッと書いてる。
天海:なにか決めてるんだって、時間を。こっからここまでは仕事。
遊川:しょうがないから書くじゃん
内田:でも書きたくて書いてる時間って若い頃だけですか?職業になっちゃうと、これでやってくってなった時から書かされることになるじゃないですか。締切が来てこういうの書いて
遊川:面白いのが浮かんだら、こういうものが作りたいなあという気持ちが強い。それには脚本が必要じゃない?誰か作ってくれ!と思うわけですよ。誰か作ってくれたら一番いいじゃない。誰か文章にしてくれ
内田:肩書、脚本家ですよね
遊川:だから、ホントは映画監督、演出家になりたくてずっとADやって。なれなかったから脚本を腹いせ紛れに直してたら 「ADのくせに。おまえ出来るんなら書け」「書いてやるよ」「次から行け」...
内田:ADで脚本直せるって、しちゃいけないことですよね。分野、職種を荒らしちゃいけない。その当時はしてて良かったんですか?
遊川:そっちのが面白いだろ?っていう。もちろんディレクターに見せますよ。
内田:現場でそれをやらせるわけですか
遊川:もちろん。「面白いだろ?」「面白いね」
内田:そういう人って今いないですよね
天海:ホントだ
遊川:つまんないなって直して、こうしましたけどいいですか?いいですよ
天海:ディレクターさんも懐の深い人
■一番やりたかったのは
遊川:脚本がつまんねーつまんねー言ってるから、じゃ直しゃいいじゃんってなるじゃないですか。でも直さない。だから俺が直してやるよ、それで30年。二人共一番やりたい仕事でした?
天海:はい。一番やりたい仕事
遊川:幸せですけどある意味大変。人って結構、二番目にやりたい仕事をやってるんだなって自分に言い聞かせながらやってました
天海:何やりたかったの?
内田:体育の先生。学校の。
天海:フェンシング強かったもんね、スポーツ女子。
内田:若い時はそういうイメージもあったかもしれませんが今まったくなんでね。筋肉もまったく。体育学校に行ってたので。スカウトされた。ちょっとアルバイト的な
遊川:未練もあったわけですか
内田:体育の先生は、テレビに出た後どうやってなればいいんだろうと思いました
遊川:体育嫌いだったから
天海:あなたはね(笑)
遊川:二人ともいい先生になれそうだよ
内田:なんでゆりさんまで
遊川:おせっかいな校長先生
内田:すごく生徒に時間割いてくれそうですよ
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■後半(抜粋)
内田:奥さんとずいぶん長く付き合って
遊川:そうだよ。15年ぐらい
内田:出来上がった作品に奥さんは言う方ですか
遊川:すごい言いますよ。素人評論家みたい。役者の芝居も
内田:こわ(笑)
遊川:あの人は合ってるとか、合ってない、とか。お前何様だよって
内田:テレビを見てる人の意見
遊川:代弁者。すごい参考になるんですよ。ほんとムカつくよね(笑)「偽装の夫婦」だって「8回はよかった。そのあと中だるみになるから気をつけて」笑ってる奴が居る、そう思ってる奴がいるんだ(笑)説得力あるんですよ。ほんとにそのあとたるむ。でもファイトが沸く方なんで
天海:合ってんですよ。本当に奥さんと。めんどくさいことも嬉しいことも、腹が立ってることもすごく嬉しそうに喋るから
遊川:だから結婚勧めてるんです
内田:ダメです
遊川:なにが?
内田:勧める必要がないんです。結婚は勧めるもんじゃない
天海:すっごく嫌な顔してるから
遊川:女でいてくださいといったんです
内田:だって、姉さんに会うといつも変なこと思うし、テレビ見てても思うんですけど、ホントに独りでいるじゃないですか(笑)なのに、どんどん綺麗になっていくのがわかんない。なんでなんだろうって。
天海:メイクの力ですよ。
内田:すっぴんが最高に綺麗な人だから
遊川:1回スポーツクラブ行ったんですよ。そしたら向こうから「あ~~!!」誰だコイツ、昔付き合った女かな、スタッフかなと思ったら、天海さん。そんときに、すっげえ綺麗だと思ったの。
内田:でしょ?
天海:やめなさい
遊川:かわいいんだよ。そんとき俺、初めて可愛いと思った(笑)
■夫婦の姿
遊川:50歳だからそんなに愛想よくしない、普通にやっぱり「おはよう」「おかえり」は言うんですよ。嫁は言いません(怖い感じで)「おはよう」「おかえり」(笑) 目も見ないで
内田:今の夫婦ってどんなんですかね、家庭って
遊川:そうでしょ
天海:いや、みんなじゃなくて
遊川:みんなだよ!
内田:そんなことないよ
遊川:な~みんな!!なっ!!そうだよな!旦那は目を見ないよな!
奥さんだって見ないでしょ。子どもしか見ない
内田:そんなことないよ
遊川:だから結婚できない、あ、言っちゃったよ(カットカット)
天海:できないんじゃなくて、しないの。
遊川:女性てほんとに逞しいよね。愛想の悪い、生活に疲れきっちゃってる
緊張感もない人が、最後ホームのところで話すときに
かわいい女になるのもあるので、とりあえずそこまではなるべく、
生活感だらだらして。
天海:見て怒るよ
遊川:(カットカット)
■「恋妻家宮本」
天海:あんな大きい男(阿部寛)が、なんで小さく見えるんだろう
遊川:あれが男の本質だと思うんですよ。図体はでかいけど心臓はノミですから
内田:そういう人ばっかりですかねえ
遊川:かっこいい男の人いる?「この人に付いていこう」って女性はいるけど
天海:一見そう見えて、うわ、ちっちぇえ男!ばっかりで(爆笑)
遊川:笑いすぎ笑いすぎ。大きく見せようとしてるんです男は。
■ホンネ
遊川:プロデューサーの奥さんが潔癖性で、キッチンは自分の城だから乱されたくないと。自分が入ってったらそこからずーっと監視が入る。違ったところに布巾があったら、すぐ戻しに行くんですって。それがすっごいイヤで。何事もなかったように戻ってきたら、いつの間にか戻ってるんですって。その奥さんは他人が入ってくるとずっと足元を見てる。あとで拭かなきゃ聞けないから。
内田:「やめてくれる?」「見ないでくれる?」とかは
遊川:言えませんね
内田:めんどくさいですね
遊川:男は理性的に「そんなこと思っちゃいけない」新聞読んでんのわかってるくせになんで話しかけてくるんだ、と思ってる、男は。いま新聞読んでる。なに?クリーニングがどうたらこうたら?そんなことは読み終わってから言えばいいと思うのに女性は違うんだ
天海:思った瞬間言わないと忘れる
遊川:目を合わせないで言うと聞いてないってことになるので、一応目を見て「いいよ」また新聞に戻らないと向こうのOKが出ない。昨日妻に「感じ悪いね」って言われましたもんね(笑)すごいこたえますよ。だって入ってくるときドアあけたから、寒いから閉めただけなんですよ。「閉めろよ」って言ったほうがいいんでしょうねきっと。それをちょっと、自分で他に用事あるふりして閉めた
内田:でもそこまで一応、演出してたんだ。奥さん傷つけないように。
遊川:2回やったら感じ悪いって言われて。じゃ閉めろよって言いたいけど言えない。けんかになるから。最初機嫌よかったんだけど。
■オリジナルへのこだわりと責任
遊川:○○さんが出るから作ります、じゃ魂が入ってない。誰が出たって面白いものを作ります、という気で。大変ですよだから
天海:遊川さん、必ず「責任取ります」ていいますよね
遊川:そらそうですよ。いちばん上だし、一番いい加減なこと言ってるから、だから逆に言ってくださいと。直しますから。俺の言うとおりやれとは誰も言ってないつもりなんだけど業界のイメージとしては「言うとおりやれよ」
天海祐希が撮影の時、加賀まりこをナンパして「変わった子だね」と言われて以来食事に誘ってもらって仲良くなった。